フランスのマクロン大統領が、電気自動車用バッテリーのパイロットライン新設を宣言
2020年1月、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、サフト・ネルサック工場を訪問し、2億ユーロ規模の新しい電気自動車(EV)用バッテリーのパイロットライン立ち上げを宣言しました。このパイロットラインは、トタル/サフトとPSA/オペルグループの間で計画された、戦略的合弁会社であるオートモーティブセルカンパニー(Automotive Cell Company (以下ACC))として知られる、戦略的合弁事業のファーストフェーズになります。
1月30日に行われたこの訪問では、フランスの大統領が初めてサフトの工場内部に足を踏みいれた歴史的な日となりました。マクロン大統領は工場内を見学し、サフトがリチウムイオン(Liイオン)セルをどのように製造しているのかを初視察されました。
そして、従業員やお客様、地元の要人などにも気さくに話しかけられ、ビジョンを共有されました:
「産業とエコロジー、この2つの概念は相反するものだと思われるかもしれません。製品を製造するのか、環境保護をするのか、どちらかを選ばないといけないと思うかもしれません。しかし、この2つの考え方が結びつくとき、皆さんの雇用創出と、地球をより尊重する未来に向けての仕事ができることになります。企業にとっての課題は、イノベーションと作り出されてきた様々なノウハウによって、生産性とエコロジーを両立させることであります。フランスのネルサックにある、サフトのパイロットラインで働く従業員の皆さん方は、(未来の電池を生産することで)まさにこの連携が実現可能であることを示しているのです。」
24,000m2の敷地を誇るパイロットラインは、EV市場向けの高性能リチウムイオン電池の新技術の開発・認証・量産化を目指し2021年に生産を開始します。
これにより、この地域で200人の技術者の雇用が創出され、また地元企業に対し様々なビジネスも創出されることになります。
次世代のバッテリーは、現行のEV 用バッテリーと比べて、20%より長い距離が走れるようになり、2倍の速さで充電されるものになります。これにより、電気自動車(EV)は2023/4年以降、内燃機関(エンジン)を利用した車よりも競争力が高まり、人気が高まり、低炭素経済への移行を支えることになるでしょう。
ACCは、最も効率的なEV電池を市場で生産することを目指しています。この“効率的”という意味は、より高速な充電、より高いエネルギー密度、より低いカーボン・フットプリント、より高い信頼性、そしてより長い耐用年数などのカテゴリーに分かれます。また、競合するバッテリーよりも極めて厳しい条件下であっても動作することも目指しています。
マクロン大統領は、今回の訪問終了時に、来客の人々や従業員に対し「フランスとドイツで2500人の雇用を創出する、非常に大規模で野心的なプログラムの第一歩です。」と述べました。
産業とエコロジー、この2つの概念は相反するものだと思われるかもしれません。製品を製造するのか、環境保護をするのか、どちらかを選ばないといけないと思うかもしれません。しかし、この2つの考え方が結びつくとき、皆さんの雇用創出と、地球をより尊重する未来に向けての仕事ができることになります。企業にとっての課題は、イノベーションと作り出されてきた様々なノウハウによって、生産性とエコロジーを両立させることであります。フランスのネルサックにある、サフトのパイロットラインで働く従業員の皆さん方は、(未来の電池を生産することで)まさにこの連携が実現可能であることを示しているのです。
エマニュエル・マクロン氏 フランス大統領EV用電池の欧州でのサプライチェーン
パイロットラインはサフトが持つバッテリーに関する専門知識とPSAの自動車に関する知識を組み合わせたプログラムの第一歩です。
長期的なビジョンとして、ACCをEVバッテリーの欧州のリーダーとして確立し、自動車部門の競争力を確保することにあります。バッテリーは自動車の価値の30~40%を占め、欧州のEV市場は2030年までに約400 GWhに達すると見込まれており、これは700万台、つまり現在の需要の15倍に相当します。
試験運用段階では、ACCは50:50の合弁会社となります。しかし今後、トタルの出資は3分の1に減り、大規模な生産に向けて他のパートナーへの門戸を開くことになります。
試験運用段階に続いて、出資パートナーは、フランス北部のドゥヴランとドイツのカイザースラウテルンにあるPSAのサイトで2つのギガファクトリーを建設を決定することになります。これらの工場は2030年までに合計48 GWhの生産能力を持つことになり、これは欧州での需要の10~15%に相当します。
この意欲的なプログラムにより、欧州および国際的な自動車メーカーに供給する戦略的に重要なバッテリーの製造ハブが確立されることになります。フランス政府はACCを「エアバス・スタイル・コンソーシアムのバッテリー版」として述べています。
トタル社のチェアマン・CEOであるPatrick Pouyannéは次のように語りました。「2015年に、トタルは責任あるエネルギーメジャー企業になるという意欲的目標を示しました。このことを念頭に、2016年にサフトを買収しました。これは、主に太陽光や風力などの断続的な再生可能エネルギーの成長を支援するためのエネルギー貯蔵ソリューションを開発することを目的としています。急速に成長している電気モビリティの発展は、サフトを介して脱炭素経済への成長とコミットメントする機会をトタルに提供しているのです。」
「フランス政府、ドイツ政府、そして欧州当局の支援を得て、当社の最高の専門知識と技術を、パートナーであるPSAと並行して展開し、競争力のある欧州電池産業を創造します。」と付け加えました。
サフトのネルサック工場は、グリッド用エネルギー蓄電設備、フォークリフト、航空機牽引トラクター、電動バス、データセンター、鉄道など、様々な用途のためのリチウムイオン蓄電池をすでに開発・生産していたため、今回のプロジェクトの工場に選ばれました。産業用電池は40年以上、リチウムイオン電池は10年以上製造しています。さらに、ボルドーにあるサフトの研究開発センターにも非常に近い位置にあります。
フランスとドイツで2500人の雇用を創出する、非常に大規模で野心的なプログラムの第一歩です。
エマニュエル・マクロン氏 フランス大統領今後の展開について
今後を見据えますと、ACCの将来の開発の方向性は、欧州電池連合が現在開発中の新しい電池技術によって明らかになるでしょう。2018年にサフトが立ち上げたこのプログラムには、Manz社・Siemens社・Solvay社・Umicore社の4つの業界トップ企業とともに、E-mobilityからエネルギー貯蔵システム、特殊産業用途まで、様々な市場向けの固体電池の開発を含んでいます。
今後、高性能リチウムイオン電池の開発を経て、ACCはアライアンスの研究に基づき、EV市場向けに固体電池を生産することになります。